電気柵とは、動物に電気ショックを与え動物を追い払い、大切な農作物を守るシステムです。
電気柵は電気ショックによる痛みと、柵は危険だと学習させる心理柵の2つにより、動物の慣れを防ぎ、長期的に農作物を守る効果があります。
電気柵は本来は人が触れても安全
電気柵の衝撃電流は、約1秒間隔で瞬間的に電気を流すパルス出力なので、人が触れても静電気のようなショックを受けますが、間隔があいているので手を離すことができ、安全です。
しかし今月の19日、西伊豆町の仁科川で川遊びをしていた家族が次々と感電し7人が死傷した事故が起き、その時の詳細が少しずつ明らかになってきました。
警察などによると、感電の原因となった電気柵は、アジサイの近くでワイヤが切れ、先端が川に漬かった状態だったといいます。
けがをした8歳の男の子は、手のひらの半分を断裂する大けがをしていて、この男の子がまず電線に触れて、周囲が相次いで感電した可能性があるとしています。
しかし、そうなると色々な疑問が出てきます。
この電気柵は、イノシシやシカなどの獣害対策のために設置されたものです。
対策のしくみは周知のとおり、電気が流れた電線に動物の体が触れたとき、電気ショックによってそれ以上動物を近寄らせないというものです。
相手が動物ということで、体の一部が重度のやけどや断裂するほどの強い電気を流しても良いという考え方は、おそらく動物愛護法に引っかかるはずですので成り立ちません。
しかし、男の子の手のひらの半分が断裂する大けがをしたというのは、相当に高い電流が流れたのではないでしょうか。
なお電気柵は、物置から家庭用の電気が引かれ、変圧器が設置されていたということですが、この変圧器は、電流のコントロールがされていない、正式な電気柵用のものではなかったのではないでしょうか。
でなければ、手のひらが断裂するほどのけがにはならないはずです。
ニュースでは、警察は専門家とともに、コンセントからつないでいた電流は、変圧器を使っていたことは分かっているようですが、その変圧器が正常に作動していたかなどを含めて、くわしく調べているようです。
電気柵というのは、100Vの電気を流すものではなく、あくまで電牧器からのパルス電流を流すべきものという点が周知されなければなりません。
電気柵の設置には特別な許可は必要ない
田舎では電気柵というものはポピュラーな存在ですが、100Vを通電した「危険なニセ電気柵」が存在している可能性があり、注意が必要です。
自治体によって異なるかもしれませんが現在のところ、電気柵の設置には行政機関から特別な許可は必要ないということです。
しかし、これは明らかに危険な装置です。
このまま放って置いては、第二、第三の事故が起こるかもしれません。
しかし、もしかしたら安全性について何も変わらないのではという心配もあります。
それは電気柵としくみが似ているスタンガンの使用には、こちらも何の許可もいらないことです。
購入において、届出制も何もないようです。
防犯グッズのはずが、反対に犯罪に使われてしまうと、大きな被害が出る可能性の高いものになりかねません。
電線に触れた瞬間だけ電気が流れるようにしたり、安全性の基準を高めるべきではないでしょうか。
電気柵そのものは住民の利益を守るためのものですから、必要な機械であることは間違いありません。
しかし電気ショックの域を超えて、手のひらが断裂するほどのけがを与えるのは、行き過ぎなのではないでしょうか。
原因を突き止めて、今後同じような事故が起きないことを祈ります。