トランプ新大統領がTPPからの永久離脱する大統領令に署名しました。
他にもオバマ前大統領が進めてきた医療保険制度改革オバマケアの見直しを指示する大統領令にも署名するなど、早くも強力な権限を行使しています。
この大統領令は、議会の承認なしで大統領自らが行政権を直接行使できるというものですが、イマイチよくわからないという人は多いのではないでしょうか?
大統領令にはどれくらいの権限があるのか?
大統領令を無効にするにはどうすればいいのか?
はたまた過去の大統領令はどれくらい有効だったのか?
そこで、アメリカの大統領令についてわかりやすく解説したいと思います。
アメリカの大統領令とは?
まずはアメリカの大統領令の中身はおさらいしてみましょう。
大統領令とは、「連邦政府や軍に対して、議会の承認を得ることなく、行政権を直接行使することにより発令されるアメリカ合衆国の行政命令」です。
「大統領命令」「大統領行政命令」「執行命令」とも呼ばれます。
大統領令は、法律と同等の効力を持ちますが、権限がどこまで制限されるかなどの範囲は米国憲法では、明確に規定されていません。
アメリカの大統領令の歴史
大統領令はアメリカ合衆国憲法が発効された翌年の1789年以降に発効されてきました。
中でも有名なのは、リンカーン大統領が1862年に発令した「奴隷解放令」です。
歴代の大統領令は1907年から番号が振られるようになりましたが、そこからさかのぼって「奴隷解放令」に1番が割り振られています。
ちなみにトランプ大統領が1月20日出した大統領令には13766という番号が振られています。
歴代大統領でもっとも多く大統領令を出したのは、フランクリン・ルーズベルト大統領で、その数は何と3522件。
オバマ政権でもおよそ170件の大統領令が出されています。
トランプ大統領はオバマ大統領が署名した大統領令のおよそ7割を廃止にする可能性があると言われています。
アメリカ大統領令の権限
大統領令は大統領自身の権限でいつでも自由に発令できます。
今回のトランプ氏のように「TPPやオバマケアはダメ!」といえば、簡単に大統領令として出せます。
手続きも書類に署名するだけ。これで大統領令が発効されたことになるのです。
えっ、そんな簡単に出せると、権力の乱用につながらない?
誰でもそう思いますよね。
そこで、合衆国憲法では、そうした強力な権限を防ぐために、権限は大統領の行政権の範囲内に限られています。
アメリカでは大統領の行政権と連邦議会の立法権が憲法ではっきりと区別されているため、いくら大統領令を出したとしても連邦議会の承認を得なければ、効力はありません。
オバマケア、TPPはどうなる?
では、トランプ大統領がNOを突きつけたオバマケアやTPPは今後どうなるのでしょうか?
まずオバマケアですが、これは2010年に連邦議会で正式に承認されています。
このため、トランプ氏の大統領令はあくまでもその見直し案を連邦議会と話し合え!というもので、議会の賛成を得て、法改正が行われなければ、現行のまま適用され、オバマケアは廃止されません。
一方、TPPは少々異なります。
なぜならTPPは連邦議会がまだ批准(承認)していないため、アメリカには何の権利も義務も発生していません。
ただし、今後連邦議会がTPPを承認すれば、話は変わってきます。
この場合、トランプ大統領は拒否権を行使することができますが、連邦議会の3分の2以上の賛成があれば、TPPは再承認されることになるのです。
もっとも、その可能性はほとんどないとみられていますが・・・
トランプ大統領は、オバマ大統領が署名したおよそ7割の大統領令を廃止する可能性があると言われています。
大統領令は最高裁判所も違憲判断を出せる
大統領令は連邦議会の反対で無効にすることができる他、連邦最高裁判所が審査して違憲判断を出すこともできます。
大統領令が最高裁で違憲とされたことは過去に2回あります。
そのひとつはトルーマン大統領の時で、朝鮮戦争時にストライキしていたオハイオ州の製鉄工場を強制接収した大統領令が違憲とされています。
まとめ
就任早々、大統領令を次々に出して自らの政策を押し出すトランプ大統領。
しかし、身内の共和党内部にもこうしたトランプ氏の姿勢に反発する声は少なくないようで、新たな混乱を招くことになるのでは?と危惧されています。
今後はトランプ大統領の思い通りに行かないことが数多く出てきそうですね。