最近、主に若者の間で「ディスる」「ディスった」と言う言葉が使われるようになっています。
これは、「侮辱する」という意味です。
「侮辱」とは、相手を見下し、言語や動作などによってはずかしい思いをさせることです。
「ディスる」の語源はアメリカのラッパー
「ディスる」の語源は、アメリカのラッパーたちが歌詞(リリック)の中に取り入れる「disrespect」という単語からきたもので、これは「無礼・不敬」という意味です。
この単語を略したものが「ディス」になり、動詞で「ディスる」です。
ディスリスペクト (disrespect) は、respect 名詞「尊敬、重視」、動詞「敬う、重んじる」に逆を表す接頭辞disがついてできた語で、名詞「無礼、軽蔑、軽視」や動詞「無礼なことを言う[する]、蔑む、軽んじる」などの意味を持ちます。
たいていは「○○を・○○とディスる」と、名称や行動に付けて使われることが多いです。
ヒップホップ系のアーティストやラッパーの間ではよく使われている言葉で、平気で実名を挙げて歌詞に入れてしまいます。
あまりにもディスの内容が酷いと訴訟の騒ぎになったりもしています。
また、これを受けたアーティストやリスナーは、アンサーソングで返すこともあるようです。
世間的には、最近よく耳にするようになった言葉、若者の流行語と言う感覚かもしれませんが、実は1990年代後半から使われています。
ただ、その使用範囲は非常に局地的で、渋谷の宇田川町や円山町界隈に集うラッパーやDJといったヒップホップ愛好者(B系)のあいだで主に使われていました。
他のアーティストの音楽性などを批判する内容の歌を「ディスった」「ディスる」などのように表現したアメリカのラッパーたちのコミュニケーションを、自分たちの日常会話でも「馬鹿にする、悪く言う」という広義的な意味で取り入れるようになったというわけです。
「ディスる」が世間に広く浸透したのはダウンタウンの番組
そんな「ディスる」という言葉が世間に広く浸透したきっかけは2007年9月4日に放送されたダウンタウン司会のバラエティ番組『リンカーン』(TBS系)でしょう。
お笑いコンビ・中川家の剛さんが、「練マザファッカー」という練馬区を拠点に活動するヒップホップ集団に弟子入りする、という番組の企画でした。
この放送のなかで、練マザファッカーの面々が頻繁に「ディスる」というワードを発したことから、それが話題になりました。
その後、ますます浸透し増してた「ディスる」「ディスった」という言葉ですが、特に若者の間では日常化してきた今、侮辱する、馬鹿にするという元の意味とは少し離れて、もうちょっと軽めの意味になってきているように感じます。
また流行語となると、その言葉でしか表現出来ないニュアンスが出来てきたりもします。
悪口や批判は口にはしにくいものです。
そんな中で「ディスる」「ディスった」という言葉は、日常的に使いやすく、曖昧なニュアンスでマイナスな態度を表現できるという、もしかすると、今の時代に必要な言葉になってきているのではないでしょうか。