検察審査会とは、検察官の不起訴の決定を、法律の素人である一般市民が、正しいかどうかチェックする制度です。
検察審査会は、国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、一般の国民を代表して、検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を受けている者)を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)の良し悪しを審査します。
検察審査会の審査の流れ
検察官が不起訴にした事件を調べ、 おかしい、起訴すべきだったと考えれば「起訴相当」(8/11以上)、そこまではいかないけれど不起訴にするのは不十分だと考えれば「不起訴不当」(6/11以上)、不起訴でよかったと考えれば「不起訴相当」と決定します。
そしてその決定を、検察庁に勧告します。
プロの法律家の人や、裁判所や検察庁等で働いている人などは除かれますが、20歳以上の人は誰でも、検察審査会のメンバーに選ばれる可能性があるのです。
検察審査会では、市町村の選挙管理委員会によって「くじ」で選ばれた検察審査員候補者のうちからさらに「くじ」によって検察審査員又は検察審査員に欠員ができたときなどに、これに代わって検察審査員の仕事をする補充員を選定します。
12月、3月、6月、9月の年4回この「くじ」が行われ、11人(年間44人)の審査員と補充員が選ばれます。
任期は6ケ月となっています。
その数は、全国で地域別に201ヵ所、岩手県内には
盛岡、二戸、遠野、宮古、一関に5ヵ所あります。
これまでに検察審査員又は補充員として選ばれた人は約50万人にもなり、多くの人たちが国民の代表として活躍しています。
検察審査会はどんなときに審査を行う?
では審査はどういうときに行われるのでしょうか。
犯罪の被害にあった人や犯罪を告訴・告発した人から、検察官の不起訴処分を不服として検察審査会に申立てがあったときに審査を始めます。
また検察審査会は、被害者などからの申立てがなくても、検察官が不起訴にした事件を職権で取り上げて審査することもあります。
さらに検察審査会は、検察審査員11人全員が出席したうえで、検察審査会議を開きます。
そこでは、検察庁から取り寄せた事件の記録を調べたり、証人を呼んで事情を聞くなどし、検察官の不起訴処分の良し悪しを一般国民の視点で審査します。
また、検察審査会議は非公開で行われ、それぞれの検察審査員が自由な雰囲気の中で活発に意見を出し合うことができるようになっています。
検察審査会で審査をした結果、さらに詳しく捜査すべきである(不起訴不当)、または起訴をすべきである(起訴相当)という議決があった場合には、検察官は、この議決を参考にして事件を再検討します。
その結果、起訴をするのが相当であるとの結論に達したときは、起訴の手続きがとられます。
審査の申立てや相談には、一切費用がかかりません。
最寄りの検察審査会事務局までお気軽にご相談ください。
この制度は、 イギリス、アメリカの起訴陪審という制度を基に作られました。
検察審査会制度の由来と限界
陪審制とは、法律のプロである裁判官や検察官の他に、 素人である一般市民が、裁判の始まり(起訴)と裁判そのもの(審理と判決)に関わるという制度です。
有権者の中から、それぞれくじで選ばれ、起訴陪審では、刑事裁判をするかどうか=起訴するかどうかを陪審員が決定します。
判決陪審では、刑事裁判なら有罪か無罪か、民事裁判なら原告と被告とどちらの言い分を認めるか、を決定します。
イギリス、アメリカの陪審は、決定権を持っていますが、日本の検察審査会は、決定権を持っていません。
そのため、あくまでも検察庁に「勧告」するだけであり、つまり「こうした方がよかったのに」と言えるだけなのです。
検察庁がそれに従って考え直すかどうかは、検察庁自体に任されています。
それが、このチェック制度の限界と言えます。
ある犯罪の被疑者を起訴するかどうか、つまり、刑事裁判を始めるかどうかの決定は、検察官に任されています。
被害者が告訴したり、第三者が告発することによって犯罪捜査を始めさせたりすることはできますが、裁判そのものを始めさせることは、たとえ被害者であってもできません。
もし検察官が間違えたり、不公平な決定をした場合はどうなるでしょうか。
被疑者が刑罰を受けるべきではないのに、起訴された場合には、裁判で真実が明らかになります。
不幸な間違いですが、それでも間違いが正されるチャンスがあります。
被害者にとっては、少なくとも、自分が傍聴できる公開の裁判で、さまざまな証拠によって裁判官が下した判決です。
完全に納得することはできないとしても、自分でいろいろ考えることができます。
反対に、刑罰を受けるべきだった、あるいは、それが犯罪なのかわからなかったのに被疑者が起訴されなかった場合はどうでしょうか。
被害者にとっては、決定の理由を教えてもらうことができないので、まったく納得できない結果に思われることでしょう。
そして、そのままでは間違いを正すチャンスは誰にもありません。
そのままでは、真実を明らかにし、正義を追求する、という刑事裁判の目的がうやむやになってしまいます。
そこで、検察審査会の出番になるということです。
検察審査会の勧告後に有罪判決が出るケースはいくつもある
検察審査会の勧告によって捜査が再開され、起訴されて有罪判決が出るケースはいくつもあります。
また、仮に裁判にまでは至らなくとも、新聞などで取り上げられることによって、政治家の汚職事件などが追及されることもあります。
1998年の12月にも、小学生が交通事故で死亡した事件について、検察審査会の「不起訴不当」の議決を受け、運転していた人が業務上過失致死罪で起訴された、ということが全国の新聞で報道されました。
世間を騒がすような大事件でなくとも、私たちにとっていつでも起こるかもしれない身近な事件でも、
検察審査会の出番があるのです。
もし地元の検察審査会のメンバーに選ばれたら、きっと良い経験になるはずです。
張り切って参加してください。