「払いすぎた利息を取り戻せます!」
ほとんどの人はこのテレビや雑誌のCMを観たことがあると思います。
広告主の多くは法律相談所で、
「100万円以上戻ってきた」などという喜びの声が紹介されていました。
いわゆる過払い金請求というやつですね。
ところが、このCM、最近パタッと消えてしまいました。
一体なぜなのか?
そこで調べてみたら、ある深い理由がありました。
目次
過払い金請求とは?
過払い金とは、消費者金融などでお金を借りたときに払いすぎた利息を取り戻せるというものです。
過払い金が発生する仕組みとは?
多くの貸金業者はキャッシングの際、利用者から合法的に高額な利息をとってきました。
それを可能にしたのが、利息制限法と出資法という法律でした。
利息制限法では上限金利は年15%。
出資法の上限金利は年29.2%と決められていました。
この間の金利は、グレーゾーン金利と呼ばれ、最大で29.2%の金利を取ることができたのです。
最大で14.2%の金利差が「過払い金」の正体なのです。
あなたがこれまで支払ってきた「グレーゾーン金利」なのです。
画像引用元:アディーレ法律事務所
つまり、年15%の利息制限法を超えた金利を設定しても、年29.2%の出資法の上限金利を超えなければ、刑事罰は科せられませんでした。
これがどれくらいの暴利であるか?
100万円を年29.2%で借りた場合の返済シミュレーション
出資法の上限金利で100万円を借りた場合、どれくらいの金利を支払うことになるのか?
たとえば、毎月3万円ずつ元利均等返済したとします。
すると、返済回数は70回。
6年近くかかります。
そして、総支払額は驚く事なかれ!
2,079,611円。
借りたお金の2倍以上を支払うことになるのです。
貸金業法の改正
このようにグレーゾーン金利に刑事罰が科せられなかったことで、多重債務者が激増する事態となりました。
これを重く見た政府は対策に乗り出し、2006年12月13日に貸金業法が改正されました。
出資法の上限利息は20%に引き下げられ、「グレーゾーン金利」が撤廃されました。
ちなみに、この年の1月、最高裁では次のような判決を下しています。
「利息制限法の制限を超える利息を支払った後でも、過払金を返還請求できる」
これによって、貸金業者は出資法で定められた年29.2%の金利分の返済を主張することができなくなりました。
そして、グレーゾーン金利で借入をしていた人は、払いすぎた金利を「過払い金」として返還請求することができるようになったのです。
過払い金請求CMの急増
法律によって、払いすぎた金利を取り戻せるようになったことで、法律事務所はこれに目を付けます。
過払い金請求のCMを大量に流し、客を呼び寄せ、代行手数料を得るようになった訳です。
これがうざいと言われるほど過払い金請求CMが流れるようになった理由です。
過払い金請求CMはなぜ消えた?
目に余るほど流された過払い金請求CMは2018年になってピタッと止まりました。
これには理由がありました。
過払い金の請求は10年で時効になるからです。
貸金業法の改正は2006年12月13日でしたが、正式に本体部分が施行されたのは、2007年(平成19年)12月19日です。
したがって、過払い金請求できるのは、2007年(平成19年)12月19日より前に借りたお金の払いすぎた利息です。
つまり、2018年の現在は時効の10年をすでに経過しているため、原則的には過払い金請求は行えません。
このため、法律事務所は過払い金請求のCMを流さなくなったという訳です。
法律事務所などが「過払い金の返還期限が迫っています」という文句でCMを流していたのは、こうした理由からです。
実際、借金した方の中には、まだ10年経ってないだろうと法律事務所に依頼したところ、すでに10年が過ぎていて過払い金が時効になっているというケースは非常に多いようです。
過払い金の時効についての勘違い
では、2007年以前に借りた人は全員が過払い金請求をできないのかというと、そうではありません。
ここは勘違いされやすいのですが、過払い金の時効は取引の終了から10年です。
したがって取引の終了から10年=完済してから10年となります。
つまり、10年以上前からの取引であっても、まだ完済していない場合には時効にはなりません。
10年前以上の借金で現在も返済を続けているという方は、過払い金が戻ってくる可能性があるので、あきらめず法律事務所に相談してみるといいでしょう。
まとめ
払いすぎた利息を取り戻す!という過払い金請求。
こうした手続きができる人は今後どんどん減っていくでしょうが、その一方で、借金に苦しむ人は減っていません。
最近は銀行が低利で借りられるカードローンに力を入れています。
これはマイナス金利の影響などで、業績が落ちているためです。
こうした事情から、銀行はカードローンの利用者を増やすため、審査が緩くなっているという指摘もあります。
また、最近はリボ払い地獄という言葉も登場しています。
リボ払いは毎月一定の金額を支払うことで、ショッピングやキャッシングが可能というシステムで、各社が盛んに宣伝しています。
実は、この甘い言葉に釣られて、借金苦に陥っている人が今急増しているのです。
詳しくは以下の記事で紹介しています!
リボ払いは危険!楽天カードで100万円の借金を背負った男が陥った地獄とは?
あたりまえの話ですが、借金は最後の手段です。
日々の生活を見直し、倹約を心がけ、無駄な出費をしないよう心がけましょう。